前回、ソフトウェアについて勉強していた際に、
受注制作目的のソフトウェアは
工事契約に関する会計基準に準ずるとのことで、
その詳細は別途確認するという風にしていたので、
早速、取り上げてみました。

私は正にこの会計基準が適用される業界にいるので、
ある程度の知識はありますが、
大抵の人は全く馴染みないと思うので、 基本的なところから触れていこうと思います。

工事契約に関する会計基準の意義

まず、なぜ工事契約に関する会計基準が設けられているかですが、
建築、造船、ITなどはプロジェクトによっては、
何年・何十年間という長期間になる場合があり、
普通に会計処理してしまうと、
毎年費用だけ発生して、売上が上がらないために、
ただただ仕掛品勘定に積もり積もっていくことになってしまいます。

そこで、ある条件下の時だけ、完成までにかかる費用の内、
実際費用がかかった分だけは売上計上していいよという
ルールを定義しているのが、この会計基準になります。

完成基準と進行基準

プロジェクトが完成基準か進行基準を適用すべきかは、
下記の項目が確度高く見積もれているかが判断条件になります。

 (1) 工事収益総額
 (2) 工事原価総額
 (3) 決算日における工事進捗度

私の勤め先では、その条件を満たすための
具体的な要求が規定されており、
適宜、適切な管理ができているか監査が入ったりもします。

例えば、請負契約時は成果物が明確になっており、
仕様の変更等は別契約で締結する必要があるなどの規定があります。


完成基準と進行基準の会計処理


工事関連の会計処理は売上計上タイミグと
勘定科目が特殊なだけで、基本的には一般の取引と一緒です。
具体的には下記のような会計処理となります。

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進行基準の売上高計算方法



進行基準での売上高計算は、
原価比例法で算出する必要があります。

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なお、プロジェクト中に見積に変更が生じた場合は、
変更発生期から下記の対応が必要です。
なお、計上済分はそれまでは
あくまで合理的に見積もられた原価での結果なので、
修正等は発生しません。

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また、変更によって、損失が見込まれる場合は、
下記の対応が必要です。

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補論:工事進行基準での利益操作について

工事進行基準は、実際にかかった費用だけ売上があがる点や
その分母がリスクが多分に含まれている
長期プロジェクトの総費用の見積額となっているため、
利益操作の余地がかなり多い基準といえます。

最近では、東芝がまさに工事進行基準での
利益操作を指摘されました。

では、工事進行基準をなくしてしまえばというのも難しく、
これなくしては適切な期間損益の認識ができなくなってしまいますし、
やはり、莫大なリソースをかけても数年間は業績に反映されないというのは、
経営者にとっても投資家にとっても望ましいことではありません。

そのため、この見積をいかに精緻化し、
人の恣意を含ませないかがポイントになりますが、
長期のプロジェクトで見積を精緻化するのは100%無理です。
最近の東京オリンピックの総費用の変遷を見て貰えれば分かると思います。
あれは必ずしも怠慢している訳ではなく、
建設やITなど長期のプロジェクトは人知を超える規模で、
その全てを予期することは不可能です。
(なので、海外ではそのリスクに保険をかけたりします)

また、安易な利益操作は粗利益以降の値を悪化させるので、
利益操作だけでなく、そもそも成績自体にも結果的に悪影響を及ぼします。

そう考えるとやはり利益操作のインセンティブを経営者に与えてしまい
その結果、より業績を落とすという悪循環に陥らないように、
この進行基準はある面では望ましいがある面では望ましくないという
ジレンマを解消してあげる必要があります。

暇があれば、どうすれば解決できるか
考えてみるのも面白いかもしれませんね。